
現物鋳造とは、生花や木の実などをそのまま原型として鋳造し、そのものの形を金属で造形する鋳造技術です。人の手では作り出すことのできない花の表情や、細部の葉脈までをも造形することが可能です。
生花を例として現物鋳造の製造工程をご紹介いたします。
1.鋳造する花を選ぶ

生花を鋳造するにおいて重要なことは、花びらが厚くハリがあり、形が崩れにくい花を選ぶことです。石膏で型を取り、電気炉で石膏内の生花を焼き切り、そこに地金を流して造形するため、花びら薄く柔らかい花であればあるほど鋳造の難易度が高まります。
2.ワックスツリー立て

花の部分を切り取り、ワックスを溶かしながらワックスの棒に花を直接着けます。電気炉で花を焼き切った際、焼かれた花が排出されやすいよう計算しながら、接着させる花の位置や角度、湯口の位置などを調節します。長年培われた知識と経験から成せる職人の技です。
3.石膏を流し入れる

先ほどワックス棒に接着させた生花を筒の中に入れ、生花の形が崩れないよう、慎重に石膏を流し入れます。その後、脱泡機で石膏の中の空気を抜くことで隅々まで石膏が行き渡り、花の輪郭をよりはっきりとさせることができます。脱泡完了後、石膏が完全に乾燥するまで放置します。
4.電気炉で焼く

石膏を流し入れた筒を電気炉に入れ、一晩焼きます。この時に中の生花は焼かれて灰になって排出され、石膏の中に花の形の空洞が出来上がります。
5.地金を流し入れる

一晩焼いた石膏を電気炉から取り出し、鋳造機で地金を溶かして流し入れます。地金を流し入れた状態で真空にすることで、花びらの細部まで地金が行き渡り、綺麗に花の形を造形することができます。
6.石膏を落とす

超音波洗浄や硫酸などを使い石膏を落とします。リングの場合はウォータージェットを使用しますが、鋳造した花は薄く繊細なためウォータージェットで洗い落そうとすると花びらが欠けてしまいます。そのため数種類の酸に漬けて石膏を溶かし、丁寧に落とします。
7.完成
